▪️目的
AWSには、サーバーやネットワークだけでなく、データを保存・管理するためのさまざまなサービスが用意されています。
Webサイトや業務システムでは、ユーザー情報や商品情報、注文履歴など、さまざまなデータを管理する必要があります。
このようなデータを管理する仕組みの一つが、データベースです。
AWSでは、データベースの構築や運用を支援するサービスとして、Amazon RDSが提供されています。
本記事では、Amazon RDSの基本的な仕組みや特徴、メリット、利用シーンについて、インフラ初心者向けに解説します。
▪️Amazon RDSとは?
Amazon RDS(Relational Database Service)は、AWSが提供するリレーショナルデータベースの構築・運用を支援するマネージドサービスです。
リレーショナルデータベースとは、データを表形式で管理し、データ同士の関係を扱えるデータベースのことです。
例えば、ECサイトでは、次のような情報をデータベースで管理できます。
- ユーザー情報
- 商品情報
- 注文情報
- 決済に関する情報
Amazon RDSを利用すると、データベースを動かすための基盤をAWS上に構築し、バックアップやソフトウェアのパッチ適用など、一部の運用作業をAWSに任せられます。
データベースそのものの設計や、SQLによるデータ操作、アクセス権限の管理などが不要になるわけではありません。
♦︎Amazon RDSで利用できるデータベースエンジン
Amazon RDSでは、複数のデータベースエンジンを利用できます。
| データベースエンジン | 特徴 |
|---|---|
| MySQL | Webシステムなどで広く利用されている |
| PostgreSQL | 高度なSQL機能や拡張性が特徴 |
| MariaDB | MySQLと互換性のあるオープンソースDB |
| Oracle | 企業システムなどで利用される商用DB |
| SQL Server | Microsoft製のリレーショナルDB |
| Amazon Aurora | AWSが開発した、高い性能と可用性を目指したリレーショナルDB |
利用するエンジンによって、対応する機能や料金、運用方法などが異なります。
また、Amazon AuroraはAmazon RDSの機能を通じて利用できるデータベースエンジンです。
▪️Amazon RDSの仕組み
Amazon RDSの仕組みを理解するために、まずは一般的なWebシステムを考えてみましょう。
Webシステムでは、ユーザーからのリクエストをアプリケーションが処理し、必要に応じてデータベースにデータを問い合わせます。
例えば、ECサイトで商品一覧を表示する場合、アプリケーションがデータベースから商品情報を取得し、その結果をユーザーに返します。
Amazon RDSを利用する場合、データベースの基盤はAWSが管理する仕組みを利用できます。
♦︎基本的な構成イメージ
ユーザー
|
v
Webサーバー・アプリケーション
|
v
Amazon RDS
|
v
データベースに保存された情報
この構成では、アプリケーションがAmazon RDSに接続してデータを読み書きします。
実際の環境では、Amazon VPC内にアプリケーションとRDSを配置し、セキュリティグループなどを利用して通信を制御する構成が一般的です。
例えば、RDSへの接続をアプリケーションサーバーからの通信に限定することで、不要なアクセスを防ぎます。
なお、上記は基本的な概念図です。実際の通信方向やデータの流れは、処理内容によって異なります。
♦︎RDSの運用はどこまでAWSが担当するのか?
Amazon RDSはマネージドサービスですが、システムのすべてをAWSが管理してくれるわけではありません。
AWSが担当する作業と、利用者が担当する作業を整理してみましょう。
| AWSが支援する主な作業 | 利用者が担当する主な作業 |
|---|---|
| データベース基盤の管理 | テーブルやデータ構造の設計 |
| 自動バックアップの仕組み | バックアップの保持期間などの設定 |
| 対応するパッチ適用の管理・実行 | メンテナンス方針の決定や影響確認 |
| 一部の監視・復旧機能の提供 | 性能監視や障害対応の方針策定 |
| マネージド環境の提供 | SQL、アカウント、権限の管理 |
実際の担当範囲は、選択する機能や設定によって変わります。
重要なのは、データベースサーバーの運用負荷を軽減しながら、データベース自体の設計や管理は利用者が行うという点です。
▪️Amazon RDSの主な特徴
Amazon RDSには、データベースの運用を支援するさまざまな機能があります。
1. データベースの構築・運用を簡素化できる
自分でデータベースサーバーを構築する場合、OSのセットアップやデータベースソフトウェアのインストール、パッチ適用などを考慮する必要があります。
Amazon RDSでは、AWSが管理する基盤を利用してデータベースを作成できます。
そのため、OSやデータベース基盤の運用にかかる作業を減らし、アプリケーションやデータベースの設計などに集中しやすくなります。
ただし、OSへ自由にログインして管理するような運用は、通常のRDSではできません。
2. 自動バックアップに対応している
Amazon RDSでは、自動バックアップ機能を利用できます。
設定した保持期間内のバックアップやトランザクションログなどを利用し、対応する構成では特定の時点のデータベースへ復元できます。
例えば、誤操作によってデータが削除された場合などに、復旧できる可能性があります。
ただし、バックアップを有効にしているだけで、あらゆる障害から必ず復旧できるわけではありません。
保持期間やバックアップ設定を適切に管理し、必要に応じて復元テストを実施することが重要です。
3. 可用性を高める構成を選択できる
Amazon RDSでは、Multi-AZ配置を利用して可用性を高める構成を実現できます。
Multi-AZ構成では、別のアベイラビリティーゾーン(AZ)に待機系のデータベースを配置するなどして、障害時のフェイルオーバーに備えます。
AZとは、AWSリージョン内にある、独立性を考慮して設計されたデータセンター群です。
例えば、プライマリDBが障害などで利用できなくなった場合、構成に応じて待機系への切り替えが行われます。
これにより、単一のデータベースインスタンスだけで運用する場合と比べて、可用性の向上が期待できます。
ただし、切り替え時には接続が一時的に中断することがあるため、アプリケーション側でも再接続などを考慮する必要があります。
また、Multi-AZの構成には複数の方式があり、可用性や読み取り性能への影響も方式によって異なります。
4. ストレージや性能を調整できる
Amazon RDSでは、用途や負荷に応じてDBインスタンスのクラスやストレージなどを選択できます。
例えば、アクセス数やデータ量が増加した場合、インスタンスの性能やストレージ容量を見直すことで、システムの負荷に対応できます。
ただし、性能を上げれば必ず問題が解決するわけではありません。
SQLの実行計画やインデックス、接続数、ストレージの性能など、複数の要因を確認する必要があります。
▪️Amazon RDSを利用するメリット
Amazon RDSを利用する主なメリットを整理します。
♦︎運用負荷を軽減できる
データベース基盤の構築やバックアップなどをAWSのマネージド機能に任せられるため、利用者が管理する作業を減らせます。
♦︎可用性を高める構成を実現できる
Multi-AZなどの機能を利用することで、障害発生時の切り替えに備えた構成を設計できます。
♦︎用途に応じて構成を選択できる
データベースエンジンやインスタンス、ストレージなどを用途に応じて選べるため、システムの要件に合わせた構成を検討できます。
♦︎AWSのほかのサービスと連携できる
Amazon EC2やAmazon ECSなどのアプリケーション実行基盤と組み合わせることで、AWS上にWebシステムを構築できます。
例えば、ECSでアプリケーションを実行し、Amazon RDSでユーザー情報や業務データを管理する構成が考えられます。
▪️Amazon RDSの利用シーン
Amazon RDSは、データを構造化して管理する必要があるさまざまなシステムで利用できます。
♦︎Webサイト・ECサイト
ユーザー情報や商品情報、注文履歴などを管理します。
♦︎業務システム
顧客情報、社員情報、在庫情報など、業務で利用するデータを管理します。
♦︎アプリケーションのバックエンド
Webアプリケーションやスマートフォンアプリから利用するデータを保存します。
このように、アプリケーションから参照・更新するデータを管理する基盤として、Amazon RDSを利用できます。
▪️Amazon RDSとAmazon EC2でデータベースを構築する場合の違い
AWSでデータベースを利用する方法は、Amazon RDSだけではありません。
例えば、Amazon EC2上にデータベースソフトウェアをインストールして、自分で管理する方法もあります。
両者の違いを整理してみましょう。
| 比較項目 | Amazon RDS | EC2上に構築 |
|---|---|---|
| データベースの導入 | マネージド機能を利用して構築 | ソフトウェアの導入・設定を行う |
| OSの管理 | 通常はAWSが管理 | 利用者が管理 |
| パッチ適用 | AWSの管理機能を利用 | 利用者が管理 |
| バックアップ | 自動バックアップなどを利用可能 | バックアップ方式を自分で設計・構築 |
| 自由度 | RDSが提供する機能の範囲内 | OSやDBの設定を幅広く制御できる |
| 運用負荷 | 比較的軽減しやすい | 自分で管理する範囲が広い |
運用負荷を抑えながらデータベースを利用したい場合は、Amazon RDSが有力な選択肢になります。
一方、OSレベルの細かな制御や、RDSでは対応できない構成が必要な場合は、EC2上にデータベースを構築する方法も検討します。
どちらが適切かは、システムの要件や運用体制によって異なります。
▪️Amazon RDSを利用する際の注意点
便利なAmazon RDSですが、利用する際にはいくつか注意すべき点があります。
♦︎料金が発生する
Amazon RDSでは、DBインスタンスの稼働時間、ストレージ、バックアップなどに応じて料金が発生します。
可用性を高めるためにMulti-AZ構成を採用する場合などは、構成に応じて料金も変わります。
利用するリージョンやDBエンジン、インスタンス、ストレージなどを踏まえて料金を確認することが重要です。
♦︎セキュリティ設定が必要
データベースには重要な情報が保存されることがあるため、アクセス制御を適切に設定する必要があります。
例えば、RDSをVPC内のプライベートなサブネットに配置し、セキュリティグループでアプリケーションからの必要な通信だけを許可する構成が考えられます。
また、データベースの認証情報や権限管理も重要です。
♦︎監視や性能管理は引き続き必要
マネージドサービスであっても、データベースの性能や容量、接続状況などを監視する必要があります。
例えば、CloudWatchなどを利用してメトリクスやアラームを設定し、負荷の増加や異常を検知できるようにします。
障害時の対応方法やバックアップからの復旧手順についても、事前に検討しておくことが重要です。
▪️まとめ
本記事では、Amazon RDSの基本的な仕組みや特徴、メリットについて解説しました。
Amazon RDSは、AWSが提供するリレーショナルデータベースのマネージドサービスです。
自動バックアップや可用性を高める構成などの機能を利用することで、データベースの運用負荷を軽減しながらシステムを構築できます。
一方で、データベースの設計やアクセス制御、性能監視、料金管理など、利用者が考慮すべきこともあります。
インフラエンジニアとしてAWSを学ぶ際は、サービスの概要を理解するだけでなく、どのような構成で利用し、何をAWSに任せ、何を自分たちで管理するのかという視点を持つことが大切です。
Amazon RDSの仕組みを理解し、AWS上でのシステム設計や運用に役立てていきましょう。

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